イギリス看護留学の概要
イギリスにはThe Nursing and Midwifery Council (看護助産師協議会、以下NMC)があり、イギリス国内で看護師及び助産師として働くためにはNMCにて設けられている規定をクリアし、申請、審査、登録する必要があります。
イギリスで資格を取得するための条件は以下の通りです。
条件1.イギリスの看護協会 (NMC) が認めるコース(学士)を修了する
NMCが認めるコースは、NMCの公式サイトのApproved programmesから検索いただけます。
NMCが認めるコースには最短3年間 (フルタイム)のコースが存在するため、日本の3年制の専門学校・短期大学卒の方でも、NMCが認める学位に相当するのではないかというご質問もいただきます。しかし、弊社では原則、NMCが定める学士は4年制大学卒と同等と認識し、専門学校・短期大学卒での、下記のステップでの資格取得への挑戦は推奨いたしておりません。
条件2.イギリスの看護協会が定める英語力の規定をクリアする
NMCが定める英語力の証明は以下の通りです。
・IELTSの場合:リスニング 7.0、リーディング 7.0、ライティング 6.5、スピーキング 7.0以上を取得
・OETの場合:リスニング B(350-440)、リーディング B(350-440)、ライティング C+(300-340)、スピーキング B(350-440)以上を取得
2回の試験のスコアを合算し、提出することも可能です(2回の試験は12ヶ月以内に受験する必要があります)。その場合、以下の要件が適用されます。
・IELTSの場合:両方の試験でリスニング 6.5、リーディング 6.5、ライティング 6.0、スピーキング 6.5以上を取得すること
・OETの場合:両方の試験でリスニング C+(300-340)、リーディング C+(300-340)、ライティング C(250-290)、スピーキング C+(300-340)以上を取得すること
※2023年2月8日、英語力の規定が一部変更されました。最新情報は、NMCの公式サイト English language requirementsからご確認ください。ただし、イギリスで学士を取得しなおした方の場合、資格登録に伴い、英語力の証明は必須ではありません。
条件3.NMCの書類審査をパスすること
NMCが定める書類(身分証明書や看護師としての卒業証明書、看護師免許書、健康診断書、英語資格の証明など)を提出し、審査をうけ、パスする必要があります。
申請書類について参照:Get your pre-application checklist
条件4.NMCが定める試験に合格すること
日本で正看護師資格を有し、且つ4年制大学を卒業している方の場合、あらたにイギリスの大学に進学しなおすことは必ずしも条件とはなりません。しかし、日本での学士・資格を基にイギリスで看護師資格登録をする場合には、イギリスで看護師をするために十分な知識を持っているか、また英語で臨床ができるかどうかを測定するための試験をパスすることが求められます。
参照:NMC CBT、NMC OCSE
イギリスでの
正看護師資格取得の流れ
日本で正看護師資格をお持ちの方の場合
イギリスの看護協会 (NMC)が認めるコースとは原則学士以上のコースとなっているため、日本で資格を有していたとしても、4年制大学卒か、専門学校・短期大学卒かによって、看護師になるまでのルートが異なります。
4年制大学を卒業している方の場合
実際は、4年制大学を卒業し資格を取得、そのうえで合計500時間(目安としては1年以上)の臨床経験をもっていることが前提の条件となります。
STEP 1 NMCが定める英語力の規定を満たす
日本で4年制大学を経て看護師資格を取得している方の場合、イギリスで看護師になるための条件1は満たしていることになります。つまりイギリスで看護師になるためには、残りの条件2「看護協会が定める英語力の規定を満たすこと」、そして条件4「NMCが定める試験に合格すること」で資格を取得することができます。
先述しているようにイギリスの看護協会が英語力の証明として認めている試験はIELTSとOETの2種類です。
且つ、OETに関しては2017年11月1日より新たに認められるようになった試験のため、イギリス国内での試験対策は困難が予想されます。IELTS対策に関しては歴史と実績のある語学学校も多いため、イギリスで看護協会が定める英語力を証明するのであればIELTSの方がよいかもしれません。
STEP 2 NMCのオンライン自己審査を受ける
NMCでは、イギリスで看護師資格登録を希望する方が申請条件を満たしているかどうか、実際に審査に入った段階でスムーズな審査が遂行できるよう、本申請前にオンライン上で自己審査を完了することを義務付けています。
STEP 3 能力審査パート1(CBT)、パート2(OSCE)を受ける
2014年10月以降、ヨーロッパ圏以外からイギリスで看護師登録を希望する海外の看護師は、NMCの能力試験に合格しなければならないという決まりになりました。能力試験は2部制に分かれており、パート1とパート2があります。
パート1 (CBT)はコンピューターベースの試験で制限時間4時間、115問の選択式試験が出題されます。
パート2 (OSCE)は、パート1のCBTを合格した方のみ、公式試験会場(University of Northampton、Oxford Brookes University、Ulster Universityなどイギリス国内の5つの大学)にて受験することができます。
STEP 4 NMCに登録申請
英語力、能力試験、身分証明、無犯罪証明、日本の資格証明などをもって、看護協会への登録、その後は就労ビザなどのお手続きとなります。
詳しくはThe Nursing and Midwifery Councilの公式ホームページ ( Trained outside the EU/EEA )をご覧ください。
専門学校・短期大学卒の方
日本で学士をお持ちでない方の場合、条件1「NMCが認めるコース (学士)に進学または編入し、課程を修了すること」、併せて条件2「NMCが英語力の規定をクリアすること」が必要になります。
STEP 1 看護コース入学または編入に必要な英語力を取得する
NMCが認めるコースへの入学には、IELTS6.5 相当の英語力が必要です。英語力が不足している方の場合、まずは語学留学からスタートし、英語力を伸ばしていきましょう。
STEP 2 看護コースに入学または編入・卒業
NMCが定めるコースは、3年間のコースが一般的です。すでに日本で専門学校、または短期大学を経て資格を取得している方の場合、一部単位を認めてもらい、通常よりも短い期間の就学となる可能性もあります。
参照:Registering as a nurse or midwife in the UK
STEP 3 NMCに登録申請
英語力、能力試験、身分証明、無犯罪証明、日本の資格証明などをもって、看護協会への登録、その後は就労ビザなどのお手続きとなります。
日本で正看護師資格をお持ちでない方の場合
日本で正看護師資格をお持ちで無い方は、NMCが認めるコースを修了し、NMCに看護師として登録手続きを行う必要があります。
STEP 1 看護コース入学に必要な英語力を取得する
大学入学には日本のような「入試」はありません。しかし、高校時代に取得している科目とそれらの成績、そして入学に際して必要な英語力の証明が求められます。NMCが認めるコースへの入学には、IELTS7.0 相当の英語力が必要です。
したがって、英語力が入学規定に達していない場合は、語学留学からスタートし、英語力を伸ばしましょう。
また、最終学歴が日本の高校の場合、大学進学前に、「ファウンデーションコース」と呼ばれる約8ヵ月から1年のコースに通うことを求められるケースがあります。日本で看護学以外の学士や準学士を持っている方の場合は、大学1年生からの入学となることが一般的です。したがって、就学期間は短い方で3年、長い方で5年間となります。
STEP 2 看護コースに入学・卒業
NMCが認めるコースを修了しましょう。
STEP 3 NMCに登録申請
英語力、能力試験、身分証明、無犯罪証明などをもって、看護協会への登録、その後は就労ビザなどのお手続きとなります。
詳しくはThe Nursing and Midwifery Councilの公式ホームページ ( Trained in the UK )をご覧ください。
イギリスで「看護師」として就職できる可能性
イギリスにはSkilled Worker visaという就労ビザがあります。看護師はこの就労ビザの要件にあるイギリスで不足している職業の一つのため、働ける可能性はあります。
Skilled Worker visaを取得するためには次の要件を満たす必要があります。
・あなたが従事する職業が、イギリスで不足している職業であること
参照:Skilled Worker visa: shortage occupations for healthcare and education (医療・教育分野の不足職種)
・イギリス内務省が認可したイギリスの雇用主(list of approved UK employers)のもとで働くこと
・従事する職種に応じた最低給与額以上の給与が支払われること(次のうちいずれか高い給与)
- 年間 £23,200以上
- 時給 (職種に応じて)
従事する職業の相場 参照:going rates table
より詳しい情報はSkilled Worker visaをご参照ください。
2023年、イギリスでは医療を含め、鉄道や空港、郵便やバスなどさまざまな公共事業においてサービス提供を行う労働者がイギリス国内全土でストライキを行いました。2020年から長期に渡り世界を苦しめているコロナによる経済的疲弊、ロシアとウクライナとの戦争下でのエネルギー価格高騰など、国民の負担が急増していることが原因として挙げられます。急激な物価高騰に賃上げが追いつかず、加えて人手不足が深刻な医療現場の環境改善を訴えるべく、10万人を超える看護師がストライキを行いました。
海外で看護師資格取得、そしてその後の就職や永住、移住を検討する上で、留学先の経済状況は非常に重要なポイントですよね。最新の情報を入手しつつ、看護留学先として人気の高い他国(オーストラリアやカナダ、アメリカなど)とも比較し、渡航先を選定していきましょう。より詳しい情報について、また資格取得先の国選びなどについての相談は無料留学カウンセリングをご利用ください。