オーストラリアの看護事情

日本では、どの教育機関で看護過程を修了しても、国家試験で合格をする必要があります。オーストラリアは、条件を満たすことにより、正看護師登録をすることができる国です。正看護師として働く上での労働条件は、非常に良く、休暇制度やキャリアアップ制度の充実度は、日本と大きく違う点です。また、分業化がしっかりとされているため、残業は少なく、ライフワークバランスをしっかりと取ることができます。ここでは、オーストラリアの看護事情について、大きく5つのポイントに絞って、紹介します。

1.資格取得方法


日本では、5年一貫の高校・短大・専門・4年制大学など、様々な教育機関で看護教育課程を提供しており、就学後、国家試験を受けて、合格することにより、正看護師資格を取得することができます。逆を言えば、一生懸命に勉強をして、看護過程を修了しても、国家試験に落ちてしまえば、翌年・翌々年と、合格するまで、試験を受け続ける必要があります。北米圏(アメリカ・カナダ)も同様です。しかし、オーストラリアでは、国家試験は存在せず、看護学士と英語スコアを取得し、看護協会に登録手続きを行うことで、正看護師資格を取得が可能です。つまり、日本で、5年一貫の高校・短大・専門を卒業されている方は、オーストラリアの大学の看護学部で就学し、看護学士を取る必要があります。

2.給与


正看護師の時給は、$41~42で、月収にすると、$6,560~6,720と高給です。オーストラリアの公立病院で正看護師として働く場合、臨床1年目~8年目まで、給与レートというものが定められており、年数にあわせて一定の給与をもらうことになります。臨床9年目以降に関しては、専門コースや大学院を卒業し、キャリアアップすることによって、給与を上げることができます。キャリアアップをしなかったとしても、8年目以降、月収$6,720ほどを支給され続けるというのは、日本と大きく異なるポイントかと思います。

3.就労環境


仕事が分業化されていることが特徴的です。看護助手、准看護師、正看護師、臨床教育看護師、病理検査アシスタントなど、様々な職種が存在し、各々が決められた範囲内の仕事を時間内に行います。例えば、看護助手は、Certificate3とCertificate4とでレベルが分かれており、業務内容が異なります。アシスタントナース有給インターンシッププログラムで取得するCertificate3で行える主な業務は、食事介助や移乗などの生活介助ですが、Certificate4を持つ看護助手は、正看護師と共にメディケーション(薬の確認と配薬、記録など)と、傷の手当(皮膚裂傷、褥瘡、糖尿病性水疱・潰瘍など、消毒や包交処置、ドレッシングの交換)を行うことができます。

また、正看護師の資格を持っていても、採血や検体採取はできません。これは、病理検査アシスタントの業務となり、各病棟を徘徊して行ってくれています。正看護師として、採血や検体採取をするためには、資格が必要となります。このように、業務が細分化されており、各業務に各担当がついていることで、オーバーワークになることもなく、就労することが実現できています。

分業化されていることにより、就労時間がオーバーすることがほとんどありません。日本では、前残業をして患者の情報を集め、定時を過ぎても後残業がある、という状況かと思います。オーストラリアは、原則、残業がありません。始業時間ぴったりに仕事が始まり、定時ぴったりに仕事が終わります。時間内に仕事が終えられない看護師は、時間や仕事管理不足と判断されてしまいます。

4.制度の充実度


オーストラリアは、休暇制度が充実しています。産休中は、パートタイムで働いていたとしても、フルタイムと同等の給与が支給されるため、心置きなく産休・育休をとることができます。有給休暇に関しては、夜勤まで行っているフルタイム看護師は、年間6週間取得することができます。有給休暇取得率が低いと、上司の管理能力不足とみなされてしまうこともあります。その他、風邪を引いたときなどに使用できるシックリーブや家族の病気や怪我の看病のときなどに使用できるケアラーリーブなどがあります。

キャリアアップ制度も整っています。日本では、勉強会に参加するのは、勤務時間外かと思いますが、オーストラリアでは、臨床教育看護師がおり、勤務時間内に勉強会を行ってくれます。また、外部の研修や勉強会であったとしても、勤務に必要なものをみなされ、給与が発生することもあります。

▼産休・育休を取り、臨床教育看護師(CNE)として働いている方の体験談

5.同僚や患者との関係性


とても良い雰囲気の中働くことができます。思っていることは言葉にして伝えるという文化があるため、時には厳しいことや傷つくようなことを言われることもあると思います。しかし、はっきりとお互いの思いを言い合うからこそ、ギスギスした人間関係というのはあまりありません。実際に、オーストラリアで働いている日本人看護師に話を聞いてみると、「失敗したり、上手くいかなかったり、患者さんに厳しいことを言われたときに、上司や同僚が励ましてくれました」など、良い関係が築けているようです。
また、患者さんや利用者さんとの関係性は、対等に近く、もちろんきちんと看護は提供するけれど、今できないことに関しては、はっきりと「できない」と伝えます。だからこそ、関係性は深まり、医療従事者に対して、「Darling」「Honey」など愛称で呼んでくれ、時には、ハグをしたり、手の甲や頬にキスをしてくれたりします。日本では、考えられない関係性ですよね。

まとめ


いかがでしたでしょうか?働く人々の心と身体が健康でなければ、患者や利用者へ、適切な医療・看護を提供することができないため、オーストラリアでは、「働く人たちの権利や心身を守る」という考えが根底にあります。また、「家族を大切にし、家族のために働く」という考えもあるため、就労時間の徹底や休暇制度の充実などに繋がっているのかもしれませんね。海外での正看護師資格取得は、お金も時間をかける上に、並大抵の努力ではできません。しかし、いま大きな投資をして、オーストラリアで正看護師として働く道を選んでみることは、今後の人生、正看護師として働き続ける上で、良好な選択の一つかもしれません。

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